リスキリングとは?企業が制度を活用して進める手順と全体像を解説

従業員のリスキリングを検討している経営者や総務人事の方は、何から始め、費用をどう賄えばよいか迷いがちです。その定義は経済産業省の検討会資料で示されたもので、進め方は学ぶスキルを決めてから手段と制度を選ぶ順です。費用面の制度は、申請するのが企業か個人かキャリア相談や研修を提供する事業者かで分かれます。定義、進め方、制度の全体像を解説します。
本記事は2026年10月時点の公開情報に基づいています。
■ リスキリングとは?経済産業省の検討会資料で示された定義

検討会資料で示された定義
経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」第2回(2021年2月26日)で、石原直子委員(リクルートワークス研究所)が示した資料におけるリスキリングの定義は、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」です。
出典:経済産業省 デジタル時代の人材政策に関する検討会(第2回)資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料(6ページ「リスキリングとは」)
リカレント教育・学び直しとの違い
同資料は、リカレント教育を「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回し続けるありようとし、学ぶために「職を離れる」ことが前提だと整理しています。リスキリングで強調されるのは、単なる「学び直し」ではなく、「これからも職業で価値創出し続けるために」「必要なスキル」を学ぶことです。
公的資料でも用語は揃わず、厚生労働省のガイドラインはリスキリングとリカレント学習を一括りに「学び・学び直し」と呼んでいます。
出典:経済産業省 デジタル時代の人材政策に関する検討会(第2回)資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料(7ページ「リスキリングの概念をもう少し詳しく…」) 出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(【Ⅰ 基本的な考え方】1 はじめに)
■ リスキリングが企業で注目される背景

検討会資料は、リスキリングが近年とくにデジタル化に伴う新しい職業や、仕事の進め方が大きく変わる職業に就くためのスキル習得を指すことが増えている、とも書いています。
出典:経済産業省 デジタル時代の人材政策に関する検討会(第2回)資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料(6ページ「リスキリングとは」)
DXに取り組む企業でも、推進人材が足りていない
DXに取り組んでいる企業のうち、DXを推進する人材の「量」が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業は合計85.5%でした(IPA「DX動向2026」、2026年4〜6月調査)。「大幅に不足している」は50.1%で、前回の58.5%、前々回の62.1%から下がっています。
出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026 ―広がるAI導入、DXは変われるか―」(4.2 DXを推進する人材の過不足状況、「DX動向2026について」)
国の方針:2022年の経済対策から骨太方針2026まで
2022年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」は、3年間に4,000億円規模で実施している「人への投資」の施策パッケージを、5年間で1兆円へ拡充する方針を示しました。2023年5月の「三位一体の労働市場改革の指針」がリ・スキリングによる能力向上支援を挙げ、2026年7月の骨太方針2026は「リ・スキリング機会を拡充する」としています。
出典:内閣府「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月28日閣議決定)(Ⅲ-1-(1)「人への投資の強化と労働移動の円滑化」) 出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「三位一体の労働市場改革の指針」(1.基本的考え方) 出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(第2章(4)人材力の強化・人材総活躍「人材の育成・能力発揮」)
■ 企業がリスキリングを進める手順(4つ)

厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(令和4年6月策定)は、労使が取り組む事項を6区分13項目に整理しています。ガイドラインは、学びの進め方を、職務に必要な能力・スキル等の明確化と目標の共有、教育訓練プログラムや教育訓練機会の確保、伴走的な支援の3段階の「学びのプロセス」としても示しています。13項目の取り組み事項をもとに企業の手順をまとめると、次の4つです。
出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(【Ⅰ 基本的な考え方】4、目次【Ⅱ 労使が取り組むべき事項】)
手順1 経営戦略と、人材育成の方向性をそろえる
最初の手順は、経営者が経営戦略やビジョンと、人材開発の方向性を示し、社内で共有することです。ガイドラインも、この共有を労使が取り組む事項の最初に置いています。
何のためにリスキリングに取り組むのかを、手順1の段階で言葉にしてください。
手順2 学ぶスキルと対象者を決める
次に、役割とあわせて職務に必要なスキルを明確にし、誰が何を学ぶかの方向性と目標を擦り合わせます。経済産業省とIPAのデジタルスキル標準(DSS)も指針の一つで、DXリテラシー標準(DSS-L)とDX推進スキル標準(DSS-P)からなります。
DXに取り組む企業の52.8%が、DXの推進に「必要なスキルは把握できていない」と回答しています(IPA「DX動向2026」、2026年4〜6月調査)。
出典:IPA「デジタルスキル標準(DSS)策定の背景・目的」(【2026年4月の改訂】、DXリテラシー標準・DX推進スキル標準) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026 ―広がるAI導入、DXは変われるか―」(4.3 DXを推進する人材の評価と育成・確保 スキルの把握状況)
手順3 学ぶ手段と、費用の出どころを決める
続いて、社外研修やeラーニングなど、学ぶ手段を選び、費用の出どころを決めます。ガイドラインが学びの費用の支援策に挙げる制度は、人材開発支援助成金と教育訓練給付金です。
助成金など公的制度を使うなら、研修を決める前に制度の内容を確認してください。
出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(【Ⅲ 公的な支援策】<⑧ 学び・学び直しのための費用の支援>)
手順4 学んだあとの実践の場と評価をつくる
最後の手順は、身に付けたスキルを発揮できる実践の場を用意し、そのスキルを評価することです。ガイドラインはこの2点を、学びの実践、評価として一つの区分にまとめています。
IPAの調査では、DXに取り組む企業の76.1%が、DX人材の評価基準は「基準はない」と答えています。学んだ人をどの業務で生かすか、何を評価の物差しにするかは、学び始める前に社内で決めましょう。
出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(目次【Ⅱ 労使が取り組むべき事項】5 ⑩⑪) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026 ―広がるAI導入、DXは変われるか―」(4.3 DXを推進する人材の評価と育成・確保 評価基準の状況)
■ リスキリングに使える制度の全体像|申請者で分かれる

名称が似ていても、リスキリングの費用に使える制度は、申請する人と所管が制度ごとに別です。
補助金と助成金の、支給が決まるしくみ
補助金には審査があり、たとえば小規模事業者持続化補助金の公募要領は、不採択になる場合があると明記しています。雇用関係助成金では、管轄の労働局長が、支給対象事業主等に該当し、かつ不支給要件に該当しないと判定した事業主等について支給決定を行い、該当しない場合や不支給要件に該当する場合は不支給決定を行います。人材開発支援助成金のパンフレットも、予算の範囲内で支給し、支給にあたって審査を行うと明記しています。補助金は審査で採択・不採択が決まり、雇用関係助成金は支給要件を満たすかの審査で支給・不支給が決まります。
出典:中小企業庁 ミラサポplus「補助金とは」(POINT 3「補助の有無や補助の額については審査があります」) 出典:小規模事業者持続化補助金〈通常枠〉公募要領(第8版:2026年7月21日)(1ページ「注意事項」) 出典:厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」(「Ⅰ-5 その他の留意事項」) 出典:厚生労働省「雇用関係助成金支給要領」全体版(令和8年10月1日版)(第1 共通要領 0601 支給決定 ロ)
申請者ごとにみた、主な制度と所管
| 制度 | 申請者・受給者 | 所管 |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 事業主 | 厚生労働省 |
| 教育訓練給付金 | 個人(ハローワークで申請) | 厚生労働省 |
| 教育訓練休暇給付金 | 従業員本人(受給者) | 厚生労働省 |
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 採択された事業者(キャリア相談、研修、転職支援を一体で行う)が補助を受ける。個人は申請者ではなく、費用負担が軽減された価格で受講する | 経済産業省 |
人材開発支援助成金は、事業主が申請する国の制度の一つです。教育訓練休暇給付金は受給者が従業員本人で、事業主の対応が要る点があります。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、キャリア相談、リスキリング講座の提供、転職支援、転職後のフォローアップを一体で行う事業者のうち、採択された事業者が補助を受ける制度です。企業が従業員の研修費に使う制度ではなく、事業者の公募は六次公募をもって終了しています(事務局サイトの告知、2026年10月時点)。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」(ページ冒頭、「5.お問い合わせ先(支給申請窓口)」) 出典:厚生労働省「教育訓練給付金」(「教育訓練給付金とは」、「教育訓練給付金の支給申請手続」) 出典:厚生労働省「教育訓練休暇給付金」(「事業主の皆さまへ」) 出典:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」事務局サイト(申請をご検討の事業者向けページ冒頭の告知・「公募案内」、転職をご検討の方向けページ)
自治体などが設ける「リスキリング補助金」は、制度ごとに内容が異なる
自治体が独自に「リスキリング」を冠した制度を設けている例があります。東京都の「令和8年度DXリスキリング助成金」は公益財団法人東京しごと財団の助成金、広島県の「令和8年度リスキリング人材育成補助金」は広島県の補助金です。
名称が似ていても、助成金か補助金か、実施する団体は制度ごとに別で、どちらも企業等が申請する制度です。
出典:公益財団法人東京しごと財団「令和8年度DXリスキリング助成金」(1.助成金概要) 出典:広島県「令和8年度リスキリング人材育成補助金の公募開始について」(1ページ「1 要旨・目的」)
■ 人材開発支援助成金|企業が申請する国の制度の一つ(厚生労働省)

人材開発支援助成金の概要と、ガイドラインが挙げる4コース
人材開発支援助成金は、職務に関連した訓練を計画に沿って実施した事業主に、訓練経費や賃金の一部を助成する厚生労働省の制度です(窓口は都道府県労働局)。厚生労働省のガイドラインが学び・学び直しの支援策に挙げるコースは次の4つで、助成率はコースごとに異なります。
| コース | 目的 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連した訓練、認定OJT付き訓練、非正規雇用労働者の正社員化を目指す訓練など |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給教育訓練等制度を導入し、労働者が休暇を取得して訓練を受けた場合 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材・高度人材の育成などの訓練 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業の立ち上げなど事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識・技能の訓練 |
制度の選び方や研修の設計に迷う場合は、人材開発支援助成金のページで支援内容をご覧ください。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」(ページ冒頭、「2.コース一覧」) 出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(【Ⅲ 公的な支援策】<⑤ 教育訓練プログラムや教育訓練機会の確保>、<⑦ 学び・学び直しのための時間の確保>、<⑧ 学び・学び直しのための費用の支援>)
2コースは時限措置:令和8年度末までの期限
事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースは、令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です(2026年10月時点)。人材育成支援コースと教育訓練休暇等付与コースには、この時限措置が付いていません。雇用保険法施行規則の附則も、両コースの助成金を令和9年3月31日までの間、支給するものとしています。
出典:厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」(3ページ「2 助成額・助成率」脚注※7) 出典:e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」附則第34条・第35条(人材開発支援助成金に関する暫定措置)
助成金を使う前に確認する、計画届と費用負担のルール
令和8年度の人材開発支援助成金では、事業主が業務命令で従業員に訓練を受講させる場合、計画届を原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ提出します。訓練経費は、申請事業主が全額負担することが必須要件です。厚生労働省の資料は、「訓練は実質無料」と言われて訓練の前後に金銭を受け取った場合や、受講の見返りに製品を無料または割引で提供された場合を、不正の例として挙げています。
出典:厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」(4ページ「Ⅰ-2 人材開発支援助成金チェックリスト付きフローチャート」Ⅰ 申請事業主が業務命令で対象労働者に訓練を受講させる場合、「Ⅲ-2 計画届の提出期間」) 出典:厚生労働省「人材開発支援助成金 不正受給 NO」(令和8年8月3日版)(2ページ「訓練経費を申請事業主が全額負担」)
この制度の申請支援について、対応できる内容をまとめています。
■ HelpTech株式会社について
HelpTech株式会社は、福岡市中央区に所在する認定経営革新等支援機関です(2026年10月時点)。助成金の申請書類の作成と提出代行は、提携する社会保険労務士法人が行います。
当社は、制度の選定や研修など取組内容の設計をご支援します。
これまでの実績は、助成金支給率98%(2021年7月の創業以来〜2026年4月時点、支給決定件数÷支給申請件数)、累計の補助金採択額60億円以上(2021年7月の創業以来の累計、当社がご支援して採択された全補助金額の合計)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | HelpTech株式会社 |
| 設立 | 令和3年7月14日 |
| 所在地 | 福岡県福岡市中央区薬院1丁目6-14 ZZZ-21ビル 5F |
| 立場 | 認定経営革新等支援機関 |
| 提供サービス | 助成金の制度選定と取組内容の設計のご支援、補助金の選定と事業計画策定への助言、研修・リスキリング、DX支援、BPO |
■ まとめ:リスキリングは学ぶスキルを先に決め、費用の制度はその後に選ぶ
企業のリスキリングは、学ぶスキルと対象の従業員を決めてから手段と制度を選びます。制度は申請者で分かれ、人材開発支援助成金は企業が申請する国の制度の一つです。
同助成金のうち2コースは、令和8年度末までの時限措置です(2026年10月時点)。事業主が業務命令で受講させる訓練では、計画届を原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に出します。
まず育てたいスキルと対象者を洗い出し、使える制度を確認してください。
制度の対象かどうかは事業の状況によって変わります。HelpTechの無料相談でご相談いただけます(電話:092-688-0878/平日 10:00-18:00)。
申請を検討されている方へ
この記事の執筆者

HelpTech株式会社 代表取締役
高橋 延明
中小企業の補助金・助成金申請支援と、リスキリングの研修事業を手がける。経産省のリスキリング補助事業の採択事業者。
よくある質問
従業員が自発的に受ける訓練を事業主が支援する場合のコースがあり、教育訓練休暇等付与コースと、人への投資促進コースの自発的職業能力開発訓練・長期教育訓練休暇制度・教育訓練短時間勤務等制度が当たります。要件は、同じフローチャートの中で、業務命令で受講させる場合とは別に示されています。人への投資促進コースは、令和8年度末までの時限措置の対象です。
事業展開等リスキリング支援コースのDX化・GX化に関する訓練では、生成AIの研修が対象になるかは、特定の業務に直結する内容か、その業務を担当する従業員を受講者にしているかで分かれます。厚生労働省の資料の例では、生成AIで商品提案書の構成案作成や文章生成、修正の方法を学ぶ営業担当者向けの訓練は対象、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は対象外です。令和8年8月3日の改正には経過措置があります。同じ改正で、本コースで助成を受けられる受講回数(同じ従業員につき1年度3回まで)のうち、eラーニングによる訓練は1回までになりました(令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく訓練から数えます)。
現状、DX推進スキル標準(DSS-P)には、業種・職種を問わず汎用的に適用できる統一的な達成基準の一覧は設けられていません(2026年10月時点)。IPAは、各スキル項目に示した「学習項目例」から自社の事業特性や育成方針に合う項目を選び、独自の評価指標を策定することを勧めています。DSSに準拠した講座を探すときは、IPAが運営するマナビDXで講座の情報を確認してください。
福岡のみに事業所がある企業は、東京都の令和8年度DXリスキリング助成金の対象外です。対象は、都内に本社または主たる事業所(支店・営業所等)がある中小企業等と定められています。
教育訓練休暇給付金は従業員本人が受ける給付ですが、事業主には就業規則等の整備や、休暇開始後の賃金支払状況のハローワークへの届出などの対応が要ります。雇用保険の一般被保険者である従業員が、労働協約や就業規則等に定めた社内制度に基づき、教育訓練を受けるために30日以上連続した無給の休暇を取る場合の給付です。従業員が自発的に取る休暇が対象で、業務命令で休暇を取得させる使い方は認められていません。給付を受ける従業員には、休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があることと、休暇開始前に5年以上雇用保険に加入していた期間があることの両方が求められます。